東京大学大学院 新領域創成科学研究科
盲導犬歩行学研究室(ワタナベ研)
研究活動の紹介
盲導犬歩行学研究室で現在進行中の研究の一部を紹介します。盲導犬、ユーザさん、そして視覚障害者の方々の課題の克服に御理解いただいている多くの研究者や、日本盲導犬協会のスタッフをはじめとした
盲導犬事業に携わるみなさんからのあたたかい御支援・御協力により研究をすすめることができています。
・盲導犬ゲノムプロジェクト
日本盲導犬協会に保存されている盲導犬繁殖コロニーの種々の訓練・適性評価
記録の収集データおよび生体試料よりゲノムDNAを抽出精製し管理保存を行っています。
盲導犬繁殖コロニー内の各データとの関連による系統化を進めるとともに、
家系・血統、盲導犬採択データおよび各個体のゲノムデータを管理し包括的に
管理することでよりよい盲導犬の繁殖・育成のための基盤データの構築を
進めています。
・安心・安全・快適・確実(2A2K)の
盲導犬育成のためのゲノム解析
盲導犬ゲノムプロジェクトによりゲノムDNA抽出・精製完了した個体のうち、盲導犬に頻発する疾患に関してゲノム解析を進めています。具体的には 盲導犬で問題になっている疾患であるリンパ腫などのがんや、レトリーバ品種に特有な体質と強く関連するゲノム多型の探索を進めています。また、同時に盲導犬採択データを用いて盲導犬になりうる資質である稟性に関与するゲノム多型も解析中です。
これらの研究により病気になりにくく、盲導犬に適した盲導犬のゲノム検査技術を確立し、2A2K(安心・安全・快適・確実)な盲導犬の育成に貢献することが期待できます。
・コロナ禍における盲導犬ユーザーの意識調査
盲導犬ユーザーをはじめとする視覚障害者は社会生活を送る上で様々な課題があり、平時においては見える人をはじめとする他者の協力やデバイス・アプリを利用することによりその課題を克服しています。しかしながら、非常事態発生時には支援の手が行き届かないことがあり、加えて状況の把握が難しい場合などはより不安を感じることがあります。
現在、日本をはじめ世界において新型コロナ肺炎の猛威により社会生活・活動が著しく制限されています。この状況下における盲導犬ユーザーの心理を調査し、解析を行い、なんらかの対処法・解決策をみいだすことは今後の非常時になんらかの示唆をえられると考え、新型コロナ肺炎の発生状況による盲導犬ユーザーの心理を調査しました。
日本全国の262名の盲導犬ユーザーにアンケートを行った結果、周囲の人々との接触による不安、マスクをすることによる弊害などの意見が挙げられました。その一方、盲導犬がいることで「同行援助をお願いすることなく自由に移動できる」ことや、「いつも傍にいてくれることで安心感がえられる」等の回答がありました。